2003年12月3日号(毎週水曜更新)

著:週刊レビュー編集長 佐藤史久(31)


「僕達が支持した小泉純一郎」
イラク問題の中で、総理について考える。

連日深刻化してくるイラク問題。
「さて、日本はどうするのか?どうしたいのか?」
「アメリカの起こした戦争について今はどう思っているのか?」
「自衛隊はどこにどういう理由で派遣するのか?」
その辺りの政府の見解・国としての考えが、いまいちダイレクトに私達に伝わってきません。国会での議論もほとんどなかったし、全体的にぼやけた情報しか伝わらない状況です。
しかし思えば、政治の難しい問題っていつもこんな感じですよね。うやむやになってそのまま実行という形が多い。一昔前は、特にそんなパターンが多かったように思えます。

さて、小泉純一郎という総理大臣がいます。
「自民党を変える、日本を変える」 という大胆なフレーズで、国民の支持を集めた総理です。
歴代の総理大臣に比べ彼が圧倒的に勝っていたのは、国民にダイレクトに伝わってくるその言葉でした。
今までの総理は、私達から遠かった。話が直接伝わってこなかった。
答弁は決まった原稿を読むだけだし、その人となりや本音も分かりづらかった。
誰だって、本音が分からない人は不気味だし、仲良くなるのは難しいですよね。だから、そんな本音を感じられない歴代の総理に対して、私達は諸手を上げて支持できなかったと思うんです。
そこに現れたのが、小泉さんでした。
彼の話はとても分かりやすかった。ダイレクトに伝わってきました。本音が伝わってくる気もしました。
だから、みんな小泉さんを支持しました。
本当に政治手腕が誰より優れているかと言えばわからないけれど、話は分かるし信用できそうだから支持したのです。

今、混迷するイラク問題。 はっきり言って異常事態です。
会社でも家でも、困った時ほど重要なのはリーダーシップ。
構成員をひっぱる、分かりやすく強いリーダーの言葉が必要です。
この非常時に、国のリーダーたる総理大臣には、何より国民をひっぱる強い言葉を発する事が必要不可欠になってきます。
そして、もともとは、この様な状況でこそ力を発揮する事が出来ると、期待され支持されたのが小泉総理ではなかったでしょうか。

しかし今、小泉総理の言葉が伝わってきません。
歴代総理大臣のようなうやむやな言葉しか聞こえません。
国民の心によく響く言葉。 それを発する事ができないのならば、極論を言えば小泉さんは首相である意味がないと思います。その発する言葉がうやむやでいいのなら、もっと政治手腕を評価された政治家の方が総理にはふさわしいでしょう。
私達は小泉さんを、今までの総理とは違うという理由で支持したんですから、逆に言えば、今までの総理と同じになってしまったなら、支持する理由がなくなってしまうと思うのです。

日本の外交や自衛にとって分岐点になるであろうと言われるイラク問題ですが、同時に小泉総理にとっても大きな分岐点になると思うのです。
僕達の支持した小泉純一郎。 彼は今も、私達が支持する対象たり得ているのでしょうか?
我々はイラク問題を見守ると共に、改めて考え直さなければならないのかもしれません。