今週の一冊
「ドリーミング・ベイビー」
新庄剛志
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5点 |
もしかして新庄剛志を知らない人は日本でほとんどいなくなったのだろうか?日本で1.2を争う熱烈な応援を受ける「阪神タイガース」の元プリンス。阪神時代からそのスマートな風貌・派手な服装+リストバンド・不思議な言動でも名を馳せ、またその野球の派手なプレースタイルでも観客を魅了(困惑?)させていた。本書はそんな彼が上記5年12億という破格の阪神との契約を蹴って、2000万でアメリカのメジャーリーグ・ニューヨークメッツに入団し、活躍するまでを綴った初エッセイです。
【あらすじ】
阪神からの5年12億のオファーを蹴って2000万一年契約・最低条件でメジャーに挑戦を果たした新庄剛志。宇宙人とも呼ばれる彼が送る不思議日記(エッセイか?)
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まことに失礼な話だが巷では「新庄、漢字書けたんかいな」という評もたまに聞きますがが…本書を読んだ感想は…「野球少年・新庄の独り言」と言った方が良い印象を受けました。エッセイなんて落ち着いた上等な門じゃない、思った事、感じた事、考えた事を思いのままに綴った日記・独り言・落書きだ。でもそれが実は心地よく面白い、っていうか単純に笑えます。多分、イチローは特にそうだが…他の選手に書かせてこれだけ正直に自分の気持ちやを書いてくれる人はいないだろう。例えば…
「飛行機が落ちても自分だけは死なないような気がする」
「僕は巨人のような球団好きじゃない」
「一度対戦ゲームにはまった事がある」
などなど。ともすれば野球とはまったく関係ないこと(奥さんとの出会いとか、過去の自分の強運話とか)も子供っぽい言い方で、かなり赤裸々に語ってくれてる。
僕は阪神ファンでもなければ新庄ファンでもなかった。メジャーに挑戦して、お金がないからと言ってフェラーリをオークションで売ったりしたときは「どうせ話題作りだろう」と冷めてみてた。
しかし、メジャーの報道や活躍・テレビでの報道の彼の楽しそうなコメントを聞くたびに気にはなる。新庄は何を考えてるんだろう?と。イチローには思惑が見える。彼は淡々と自分の力を試して結果を残すことにやりがいと感じているんだろう。イチローは野球を大人として楽しんでる。だからあまり笑わない。かみしめているんだろう。だがこの新庄日記からは「子供の楽しさ」があふれてます。本当に楽しく野球がしたい・目立ちたい・カッコいいと褒められたい・お金もっと欲しい…という正直な気持ちが所狭しとかかれている。(逆を返せばそれだけしか書いてない=それだけしか考えてないのか?(笑))それが新庄の思惑(カッコいいって言われたい)とは違う所で、かわいい・爽やかという感情を僕に呼び起こします。
本書は基本は5点です。野球好きなら+1点。新庄に興味があるなら+1点。って、とこでしょうか。きっと今よりも好きになると思いますよ、新庄が。でもやっぱり・・・わからんなあ(笑)面白いけどわけわかんない中学校時代の友達を見る気分。
評者→高橋明彦(27):好きなジャンルはもっぱらミステリー。年食ってから一番印象に残った本は京極夏彦「姑獲鳥の夏」。人が死なないストーリーの本も楽しく読めるように鋭意努力中。
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