音楽レビ ブックレビ ひとこま画像 2005年7月13日号
 
【不定期更新映画レビュー】 著:システム開発会社勤務 青木泰子(32)

今週の一本
バットマン ビギンズ」

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世の中、いろんな“マン”がありますが、世界三大マンをあげるとすれば、スーパーマン、スパイダーマン、そしてバットマンだと思うのです。この中でバットマンが一番マイナーな気がするのですが、どうでしょうか(失礼)。そもそも彼が何故“コウモリ男”を名乗っているのかもあまり知られていません。そんなバットマンの誕生秘話を描いたのが、本作『バットマン ビギンズ』です。

数年前に『レクイエム・フォー・ドリーム』の監督ダーレン・アロノフスキーがバットマンの次回作を撮るという噂があったのですが、この話はポシャったようで、かわりに『メメント』の監督クリストファー・ノーランが抜擢されました。バットマン役には『リベリオン』のクリスチャン・ベールを起用。ベールさんは役者バカとでも申しましょうか、『マシニスト』で演じた激ヤセする男の役で本当にミイラのごとく激ヤセし、フラフラになりながら演じてて、ファンに余計な心配させてました。今作ではちゃんとムキムキ状態に戻っていて一安心です。ヒロインにはトム・クルーズの婚約者として知られる(としてしか知られていない)ケイティ・ホームズが出演。他に、リーアム・ニーソン、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、ルトガー・ハウアーなど、親父フェチにはたまらん面々。色んなタイプの親父を取り揃えております。あ、もちろん渡辺謙さんもいるよ(超チョイ役)。

ではまず、クリスチャン・ベール演じる新生バットマンについて。バットマン役に必要な要素といえば、ズバリ、「顔の下半分」だ!マスクをかぶった状態で露出する鼻から下の部分がカッコ良くないといけません。しかしこれがなかなか難しいようで、歴代のバットマンたちはビジュアル的にいまいちだった。中でも酷かったのが『バットマン&ロビン ミスターフリーズの逆襲!!』でジョージ・クルーニーが演じたバットマンでして、肝心の顔下半分が青い(ヒゲで)という間違ったビジュアルで度肝を抜きました。ジョージ、ヒゲ濃すぎ。もう一度言う。ジョージ、ヒゲ濃すぎ。ジョージのヒゲはそりゃもうジョリジョリかつチクチクでして、うかつに触ると刺さります。って、知らんけどね。その点、クリスチャン・ベールならお肌つるつるなので大丈夫。あごのラインもなかなかカッコイイ。合格!たったこれだけで合格だ!

過去作品と比べ、今回のバットマンは大きく路線変更しています。今までのバットマンには、現実に有り得ないようなマンガ的キャラクターが登場し、あくまでアメコミ的な雰囲気を損なわないように撮られてました。でも今作は、そういったマンガ的要素を出来るだけ排除したリアル路線なのです。そのため、悪役キャラの奇抜さもかなり抑えられていて、ちょっと変わったテロリストといった感じ。バットマンVS忍者風テロリスト集団。映像的にも特有のケバケバしさが消えて、落ち着いた印象になってます。これにより、かつてのバットマン映画がどうしても払拭できなかった幼稚っぽさがかなり軽減されてます。過去作品がアメコミマニア向けであるとするなら、今作はもっと広い一般層に向けて作られていて、普通の人(というと語弊がありますが)でも楽しめるように撮られているわけです。ここは素直に評価したい。この「誰でも楽しめる」という路線はここ最近のアメコミ映画界の流行りと言えるでしょう。

ただ、最近のアメコミヒーロー映画に不可欠であるアクションシーンはあまり楽しめませんでした。どうもノーラン監督はアクションシーンを撮る気がないようでして、悪者を倒すシーンがまるでホラー映画のよう。つまり、エイリアンやプレデターが兵隊さんを襲うがごとく、バットマンがゴロツキどもに襲いかかるのだ。しかも暗くてよく見えない。よく見えないけど、とりあえずバットマンが相手を殴った「ボグッ!」っていう音だけは聞こえる。まあ、スクリーンが暗いのはバットマン映画の宿命(夜行性だしね)なので仕方ないとしても、もうちょっと工夫できんもんかねぇ。『スパイダーマン』みたいな魅せるアクションが欲しかったなぁ。

路線変更による影響も良いことばかりではありません。大富豪の息子ブルース・ウェインは両親を殺された憎しみから、その莫大な財力を使って悪に立ち向かおうとします。その彼が苦しみ、悩み、考え抜いた末に選んだ方法が「自らが悪を倒すシンボルとなり、基本的にパンチとキックで悪人をひとり一人やっつけていく」というとてもマンガ的なもので、ちょっぴり違和感を感じました。今までのバットマン映画では全く感じなかったこの違和感は、他の要素をリアルにしてしまったことによる弊害かもしれません。

2時間20分というバットマン映画としては異例の長さの本作ですが、それでも時間が足りなかったようで、ラスト20分がやけに駆け足で語られ、驚きました。大急ぎで後片付けして、撤収てな感じ。特にバットマンである主人公の心境をヒロインがセリフで説明しまくるシーンが違和感爆発!困った顔の主人公を前に自分のペースでしゃべりまくるヒロイン。16歳離れたトムを手玉にとるケイティちゃんの本質を見た気がしたが、気のせいか?しかもこのシーン、ケイティちゃん激しく胸ポチ。長い物語のラストというこの大事な時に、なぜ乳首をポチらせる必要があるのだろう。分からん。サービス?全然嬉しくないが…。それとも、これも最近のアメコミ映画界の流行りなの?

評者→青木泰子(32):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。

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