今週の一冊
「新しい歴史教科書」
西尾幹ニら著
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4点 |
昨今、新聞等で騒がれている「新しい歴史教科書」が本屋に並んでいましたので、ちょっと読んでみました。賛否両論・思想云々という難しい話は多くあると思いますが、それはさて置き、ざっくり読んだ個人的感想を述べてみたいと思います。
【あらすじ】
話題沸騰。中学生用新しい歴史教科書。
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話題の大きさがあったのでちょっと姿勢を正して読んだのですが…基本的に「ただの歴史教科書」だったので立ち読みして拍子抜けした人も多くいたのではないでしょうか?それは装丁というか、ページ構成というか…まあ仏像の写真があったり昔の人の台詞が掲載されてたり、年表があったり…と。そうですね、そりゃ確かに歴史「教科書」ですから、昔、僕が使ってた山川の日本史とか教育出版の教科書と基本は一緒であるはずです。これだけで購入意欲というか読書意欲がなくなった人も多いでしょう。僕もそうです(笑)
話題になってるのでちょっと目を通したい…という方へのオススメとしては、1:古事記の神話の描写・2:明治〜昭和時代の戦争に対する描写・3:多く掲載されてる時代コラム…の三点が注目するべき点でしょうか。
ざっくり上記の点を踏まえて読んだ感想としては…神話の描写・おもしろいコラムの多さという点を考えると、まあまあ面白い教科書なんじゃないかと感じました。僕も昔、中学生の塾の講師をしていた経験があるのですが…歴史の面白さを教科書は2割も伝えてないと感じていました。歴史のこぼれ話や大河ドラマ・赤穂浪士とか白虎隊…多くの歴史には人のドラマがあります。今までの歴史教科書は、事実(と思われること)をただ年表どおり羅列して味気の無い分厚い本で有ったんだと思います。それがこの教科書は、良くも悪くも書き手の熱が伝わってくる。過去の出来事に鮮やかな色彩をつけよう、もっと面白く…という熱さが伝わってくるのは好感が持てます。
特に教科書作成メンバーの一人、小林よしのり氏も言ってましたが古事記の神話紹介の部分で…天照大御神が天の岩屋戸に隠れて、アメノウズメが岩の前で踊って…っていう有名な神話がありますが、その描写でも「アメノウズメが岩の胸を出して踊り、まとってる布を陰部まで下ろしてしまい、まわりの神々は大笑い」的な内容の記載があり、僕は中学生の教科書としてそっちが問題になるべきだと思います(笑)
この教科書全体をまとめてみると確かに歴史に対する「確固たる意図」は感じます。教科書に作者の「恣意的な意図」が見えるという点では確かに賛否が分かれるのでしょう。僕は賛成も、反対もしません。そして、歴史について自虐的でもなければ必要以上に賛美する気もありません。
どうしても、この「歴史教科書を作る会」の人も、それに過剰に反応してる人も…過去に拘泥してるようなきになります。歴史を振り返り過ぎる事で、失うモノも有るのではないでしょうか。
僕はそれよりも、二年位前に理科の教科書で「パブロフの犬」の記載が消えた事の方がショックでした(笑)(動物愛護の精神から動物実験的「パブロフの犬」は不適当だったのでしょうか・・)残念です。
それではまた再来週、週レビでお会いしましょう。
評者→高橋明彦(27):好きなジャンルはもっぱらミステリー。年食ってから一番印象に残った本は京極夏彦「姑獲鳥の夏」。人が死なないストーリーの本も楽しく読めるように鋭意努力中。
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