音楽レビ 映画レビ ひとこま画像 2001年11月7日号
 
 【毎月更新ブックレビュー】 著:ポータルサイト勤務 高橋明彦(27)
今月の一冊
「白い犬とワルツを」
T・ケイ 兼武 進訳
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御久しぶりです高橋@ブックレビです。少々お休みを長く頂き申し訳ありませんでした。今後は週レビリニューアルに伴い心機一転月刊ブックレビという形で再びペンを取りたいと思っております。引き続き週レビ共々ご愛顧の程お願いします。

【あらすじ】
50年来の妻を失った老人と、そこに現れた謎の白い犬を巡る心温まるショートストーリ。

さて、復活記念第一弾の割には・・・凄く地味な小説を読んでしまいました。 「白い犬とワルツを」です。装丁・帯・題名等を考えた結果、第一印象は「最近売れ筋の癒し系文庫本小説」・・・って感じです。皆さんもそう感じるはずでしょう。事実その予想は大当たりです。

この物語は例えるならば「予定調和のディズニーランドアトラクション」のようなモノです。 50年来連れ添ってきた奥さんを無くした老人が老後を心配する子供たちに囲まれる中、幻のような白い犬と出会い、そして人生の最後生きる…なんの変哲も無いストーリー。あなたがこの本を手に取って20分も読めばストーリーから結末まで容易に想像がつくでしょう。

しかし例えにも上げましたが、この本の魅力はそこに有ると思うのです。 人々はディズニーランドにミッキーが爆薬で吹っ飛ぶようなアトラクションを期待してるのではなく、予定調和の中、期待通りに話が進む、期待通りのラスト。そんな安心感を楽しんでいるのではないかと思うのです。この本も同じだと思います。予想通りの展開、落ち着いた語り口、描く情景の優しさ、そして静かな「予想通りの」ラスト。全体を覆うそのうっすらとした安定感が心地よさを感じさせてくれるのでしょう。

最近の世知辛い世の中は何かを啓蒙するような書物がベストセラーを記録しています。チーズを探すより金持ち父さんになるより、僕はこういう本で一服できるような人間になりたいと思ってます。皆さんも心がささくれたらこんな本を読んでみたらいかがでしょうか。ベタではありますがね。

今月のブックレビは以上です。また来月お会いしましょう・・・高橋でした。

評者→高橋明彦(27):好きなジャンルはもっぱらミステリー。年食ってから一番印象に残った本は京極夏彦「姑獲鳥の夏」。人が死なないストーリーの本も楽しく読めるように鋭意努力中。

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