今月の一冊
「この方法で生きのびろ!」
ジョシュア・ペイビン デビッド・ボーゲニクト
倉骨 彰 訳
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新年明けましておめでとうございます。少数精鋭ブックレビの読者に、今年も本の魅力の一片でも伝えれればと思っております。引き続き今年も週レビともども、ブックレビをよろしくお願いいたします。
さて、新年一発目は「この方法で生きのびろ!」という本を読んでみました。これはCDで言うならジャケ買い(ジャケットのみを見て購入する)と言いますか…本屋で気になった本を衝動買いで購入した典型的な本です。
内容はというと、題名から想像してみて下さい。…はい、その通りです(笑)この本は小説や物語ではなく…「できる!ウインドウズシリーズ」や一世を風靡した「完全自殺マニュアル」のような形式の本であり、この本には「こんな時はこうやって生きのびろ!」というシチュエーション別、生き残り方法HOWTO本となってます。
そんな救急読本みたいな本の何が面白い?と思うかもしれませんが…これが意外や意外。面白いんです。知的好奇心を刺激するとは、こういうことでしょう。何が面白いかと言いますと…一歩間違うと冗談のような中身です。ざっと見てみましょう。
まず…役立ちそうな所で「車の鍵をキーなしで開ける方法」とか「パンチを食らいそうになった時」「凍傷にかかったら」など実用度は比較的高い知識も有ります。しかし問題はここからです…「車でスピンターンをする時」「建物からゴミ収集庫に飛び降りる時」「走る列車の屋根を歩くとき」など映画顔負けシチュエーションから、ついには「小包爆弾が送られて来た時」「流砂に巻き込まれた時」「クーガーに襲われた時」…すでにクーガーというモノが生き物なのか何なのかもわからないくらいの脱線ぶりです。
しかし、これらすべてのシチュエーションに「どこまでも真面目に冗談は一切なしに」解説しているところが本書のミソです。この本を手に取った人は雑学としての延命術にむしろ面白さを感じるかと思います。
この系統で面白さをかもし出している本は「空想科学読本」が有りますよね。タケコプターを実際に使ったら頭が飛んでいってしまうとか…ゴジラは存在した瞬間に潰れるとか…。同じ種類では有りますが、こちらのほうは「狙ってない」天然の面白さという点で異なります。どこまでもどこまでも「真面目」なのです。
正月早々変な本を…と思うかもしれませんが、昨今の情勢を鑑みるに、一度チェックしておいても「面白い」内容では有ると感じます。もちろん、この知識が必要な時に思い出して行動できるかはまったく別問題ですが…読書がエンターテインメントを追及する小説などのジャンルとは別に、このような「知識の拡充」を目的として「面白さ」に転じている形も本のひとつの世界を提供してくれていると感じました。
立ち読みでも良いのでちょっと覗いてみてください。もしかしたら2002年の貴方をピンチを救う知識を得られる…かもしれません(笑)もちろん、この本が役立つようなシチュエーションにならない事を祈ってはおりますが。
それでは、ブックレビは以上です。皆様今年も生き延びましょう。…ブックレビ高橋でした。
評者→高橋明彦(27):好きなジャンルはもっぱらミステリー。年食ってから一番印象に残った本は京極夏彦「姑獲鳥の夏」。人が死なないストーリーの本も楽しく読めるように鋭意努力中。
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