今週の一本
「チョコレート」
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「This
door tonight has been opened!」
本年度アカデミー主演女優賞を獲得した際のハル・ベリーの言葉です。賞がすべてとは思いませんが、このコメントはとても印象に残りました。これは黒人女性が初めて主演でオスカーを手にした作品です。
監督はスイス生まれの新鋭、マーク・フォスター。脚本はミロ・アディカとウィル・ロコス。デビュー作にしていきなりアカデミー賞のオリジナル脚本賞にノミネートされました。
レティシア役ハル・ベリーは、『ソード・フィッシュ』でかなり美形のイメージがあったのですが、今回は驚くほど地味で幸薄そうな役どころでした。ハンク役にビリー・ボブ・ソーントン。最近では『バンディッツ』『バーバー』に出演していますが、相変わらず抑えた渋い演技をします。今や無口オヤジ界の星ですな。
いや、久々にハリウッドっぽくない映画を観ました。奥ゆかしすぎるほどの演出でした。説明くさい部分が全くありません。しかもハンクは自分の感情をほとんど口に出さず、無表情。しかし、彼の心の中にはさまざまな感情が渦巻いています。悲しみ、後悔、焦燥、葛藤。それらすべてが、最小限の情景描写のみで語られていきます。潔いほどの寡黙主義。
観る側はスクリーンから色々読み取ってあげないといけません。
この映画はなぜか18禁でした。堅い映画かと思っていたので不思議だったのですが、確かにエロいです。また、そのエロシーンが長い。でも、ただのエロではありません。
このセックスシーンは本作で最も重要な場面なのです。ここで挿入される鳥籠の映像は二人の心情を描写していると思うのですが、どうでしょう。鳥がハンク、鳥篭は彼が長年囚われていた差別意識。そこに進入する手(ハンクに助けを求めるレティシア)。暴れる鳥(動揺するハンク)。みなさんはどう思われたでしょうか?
失って初めて過ちに気付いた不器用な男と、全てを失ってなお生きていかなければならない女の、痛々しいほどのセックス。それが偏見を解く最大の鍵となるなんて、なんだか妙に人間臭いじゃないですか。良心とか友情なんかより、肉体的快楽(精神面含む)がきっかけってところがリアルで説得力があると思います。そこには綺麗事じゃないホントの何かがある気がするんですよ。
さて、この映画、ミニシアターの最前列で観たのですが、エロシーン開始と同時に隣のカップルが激しくいちゃつき始めまして、ビビリました。前見ても横見てもエロで。
評者→青木泰子(29):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。
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