音楽レビ ブックレビ ひとこま画像 2002年10月23日号
 
【隔週更新映画レビュー】 著:システム開発会社勤務 青木泰子(29)

今週の一本
トリプルX」

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ハテ?私はヴィン・ディーゼルのプロモビデオを見ているのだろうか。これはMTVだろうか。そんな思いに何度もかられました。とても眠くなりました。ていうか寝ました10分ほど。

主演は今、全米で最もクールでセクシーな男、ヴィン・ディーゼル。来日してのプロモーションでは100人の女性ファンを集めたイベントを堂々敢行。大人気ぶりをアピールしていました。実はこの人、『プライベート・ライアン』のカパーゾ2等兵なんですよね。こんな派手な売り方すると、今後社会派映画に出れなくなるのではと心配してしまいます。監督ロブ・コーエン。この二人は車バカ映画『ワイルド・スピード』でも組んでいました。ヴィン・ディーゼルは何気に製作総指揮にも名を連ねています。力入ってますね。共演にサミュエル・L・ジャクソン。このところ彼は仕事を選んでない印象があるのですが気のせいでしょうか。

アメリカ十代男子の関心事として、スノボ・モトクロス・BMX・インラインスケートなど、いわゆるエクストリーム系スポーツというものがあります。いずれもアクロバティックなアクションを魅せるスポーツでして、これがアメリカのヤングに大人気。監督はまさにその年代(ヤング)をターゲットにしているのですね。そして、スクリーンでこれらを魅せてくれるのがヴィン・ディーゼルというわけです。映画は概して007不良版とでも言いましょうか。このアクションが撮りたい、いえ、このアクションをする「彼」が撮りたいばかりに話を追加するという、本末転倒タイプ。陸も海も空も、彼の背景になるために存在しているのです。不良版007ということで今作もアイテムが充実していまして、透視ゴーグル、目的に応じた弾を装弾できる銃、チューインガム式爆弾、改造車など、盛りだくさんです。中でも透視ゴーグルが凄い。壁の向こうが透けて見えるんですよ。丸見えですよ。「とーしゴーーーグルーー!」(大山のぶ代)。吹き替え版はぜひこんな感じで。

007が毎回新しい女と寝るように、ヴィン・ディーゼル演ずるザンダー・ケイジにもやっぱりエロシーンが用意されているわけですが、こんな感じです。部屋に入るザンダー。そこには下着姿の見知らぬ美女が。官能的な音楽に合わせ、お色気ダンスをくねくね踊ります。
くねくね、くねくね。
ザンダーにやり。で、負けじと上着をTake Off!テイカァッオッファッ!!(キ○ガイ)
いやなんかすみません。昔の洋モノエロビデのようだったので。しかしこんな男が…セクスィー?最近の女人の考えることはわからんのう。

ドクロマーク夜露死苦のメタル系音楽に合わせ、様々なアクションに挑戦してはクリアしていくヴィンはまるで海外版テレビゲームの主人公そのもの。眠気がピークに達した終盤、三十路前の女はようやく気づいたのです。
これはアメリカの子供向け映画なのだと。車、バイク、スノボ、美女、筋肉、筋肉、アメリカのガキの夢がいっぱい詰まっているのだと。そう、そんな映画があってもいいのかもしれません。ただ、日本で誰が観るのでしょうか。そんな需要はないと思うぞ。

そうそう、格闘家の魔裟斗がヴィンの大ファンらしいです。なんと魔裟斗の腕には「XXX」のタトゥー(シール)が。魔裟斗曰く、「ライバルは自分自身とヴィン・ディーゼル」だそうです。ふーん。へえー。ふーん。ま、大人の事情ですかね。あと、検索サイトにて『トリプルX』で検索すると、いろんなエログッズが出てきてわりと楽しいです。

評者→青木泰子(29):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。

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