今週の一本
「ザ・リング」
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あれは、ちょうど4年前。深夜、自宅でのビデオ観賞。当時25歳だった私は、貞子が這い出てくるシーンで恐怖のあまり「ぎょえぇ〜〜〜〜〜」と絶叫。一緒に見ていた友人は、画面よりもその声にビビッたといいます。さすがにチビリはしませんでしたが。『リング』はそんな思い出(どんな?)深い作品です。そして今、ハリウッド版『ザ・リング』となって帰ってきました。
監督ゴア・ヴァービンスキー。ミュージックビデオ、コマーシャルフィルム制作を経て、映画監督となったビジュアル重視の人です。主演は『マルホランド・ドライブ』での鬼気迫る演技が素晴らしかった、遅咲きの苦労人ナオミ・ワッツ。元亭主役にマーティン・ヘンダースン。特殊メイクには大御所リック・ベイカーを起用。本来なら白粉と三白眼の人を用意すれば事足りるはずなのですが、良くも悪くもハリウッド的ですよね。
はっきり言うと、怖さではオリジナルに遠く及びません。日本版『リング』にて、特殊メイクやスプラッタ描写に頼らず、心理ホラーとしての新たな怖さを打ち立てた中田秀夫監督。じわじわと、いやらしいくらいの不気味さは他に類を見ないと思うんです。しかし、『ザ・リング』の怖さはそれとは明らかに異質のものでした。あのおどろおどろしい感覚は、日本独自の文化なのでしょうか。従来のホラー映画にはない独特の恐怖感覚を再現してほしかったのになぁ。そのかわり、西洋における薄気味悪さ、不吉さは十分出ていたと思います。欧米の恐怖映画としてはなかなか健闘したのではないでしょうか。
今回、貞子に代わってサマラにリニューアルされているわけですが、貞子は怪談的で、サマラはモンスター的だと感じました。基本は土左衛門ですからね。あと、サマラちゃん喋っちゃだめ。声かわいいから。
そんでもって、とにかく動きが速い。あまりの速さに、元亭主の方もビックリしておられました。それと、肩をうねうねさせながら歩くいわゆる貞子ウォークですが、なっとらん!シャキシャキしすぎ。もっと肩をですね、抑揚をつけて、こう右、左、右、って何言ってるんでしょうか私は。このあたり、格闘シーンの演技指導に香港からクンフー使いを招くように、ウォーキング指導に日本人スタッフを呼んでほしかったなぁ。日本が持つノウハウを伝授、とかあってもよかったんじゃないでしょうか。
ついでに言うと、虫使いすぎ。なんで虫なのかわからん。『マラブンタ』じゃないんだから、って誰も知らんか…。こわいか?虫。キモいだけで、怖さとは別だと思うのだが。怖さ=グロテスク、この王道から外れていない気がする。そのあたりの恐怖感覚のズレが、随所に出ていたと思います。
日本版とハリウッド版の違いが、日本と欧米の恐怖感の違いなのかもしれません。
つまり、恐怖と文化は密接に関係しているのですな。ってなんだか賢そうですね。えへ。
評者→青木泰子(29):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。
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