音楽レビ ブックレビ ひとこま画像 2002年12月18日号
 
【隔週更新映画レビュー】 著:システム開発会社勤務 青木泰子(29)

今週の一本
ゴジラ×メカゴジラ」

>>>>>


怪獣、それは男のロマン。巨大にして凶暴、全てを破壊する絶対的なパワー。そこだ!火炎だ!街を焼き尽くせ!
メカ、それは男のロマン。冷たい重量感、ピカピカの鋼鉄ボディに武器満載。ミサイル発射!ビーム!ビーム!
そんな男子の2つの憧れを兼ね備えたのがメカゴジラだ!(妄想)

ゴジラ映画過去25作品のうち、メカゴジラの登場は3回。あるときは大宇宙ブラックホール第3惑星人が作った対ゴジラロボとして、またあるときは大宇宙ブラックホール第3惑星人が作った対ゴジラロボ2号として。さらに、国連G対策センター(GはゴジラのG)が開発した対ゴジラ兵器として登場した。そして、4度目の登場となる今回はなんと、対特殊生物自衛隊(なんじゃそりゃ)第一機龍隊所属の生体ロボット、その名も3式機龍だ!

監督は手塚昌明。ゴジラ映画を撮るために東宝映画に入社したという情熱の人。前々作のゴジラ作品『ゴジラ×メガギラス』で監督デビュー。こちらはあまりに子供だましなトホホ作品でしたが…。
主演は釈由美子。第一機龍隊に所属する機龍のオペレーター家城茜役です。初主演映画『修羅雪姫』では、ただの天然ボケアイドルではないことを見事証明しました。 今回も全力投球のいい演技だったと思います。
その他に、人工生物学の権威として宅麻伸、総理大臣役として中尾彬などが出演。んで、ゴジラっちゅうことで松井が出てました。台詞もあるよ(棒読み)。

今回は怪獣映画らしからぬ構成になっておりまして、ゴジラに対する側、つまり、機龍を操る茜の挫折や苦悩を軸にストーリーが進行していきます。自らのミスが招いた仲間の死、仲間からの疎外、孤独などが彼女の敵なのです。それらに立ち向かっていく姿は、スポ根そのものでした。
そして、ゴジラが主役というゴジラ映画の常識を潔く切り捨てている。もはやゴジラは、あまりにタイミングよく現れる自然災害のような存在でしかありません。

機龍の設定に関して、監督はかなり『エヴァンゲリオン』の影響を受けているようです。早い話、パクリです。ゴジラの骨をもとに作られた生体兵器という点、連続稼動限界2時間、ゴジラと共鳴して暴走、家庭用電力を拝借して復活など、あげるとキリがない。しかし私は満足でした。なぜなら観客へのサービス精神、製作者のゴジラ映画への熱い想い、 全ての怪獣映画に共通するバカっぽさ、これら三つの要素の程よいバランスが心地よかったからです。

そうそう、ナイスなバカショットもいくつかありました。
・東京の夜空をバックににらみあうゴジラと機龍
・満月をバックに空から舞い降りる機龍
・朝焼けにたたずむ機龍と茜
などです。
そのアングルはまるで、子供向けロボットアニメそのもの。あまりのバカショットぶりに私は胸が熱くなりました。手塚監督はホントにアニメが好きなんだな、と思いました。熱血スポコンロボットアニメを観る気持ちで鑑賞するのが、この映画を楽しむ秘訣なのかもしれません。私も観ていくうちに、すっかり幼児退行ちまちた。とても楽しかったです。

惜しむらくは、劇場入り口でモギリのお兄さんに貰った「メカゴジハムくん」(メカゴジラの口からハム太郎がぴょっこり飛び出す)が緑色だったことです。銀色がよかったのに〜。でも大人なので泣きませんでした。

同時上映の『劇場版とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ!幻のプリンセス 』もついでに観ました。劇中、「ハム」という言葉が2万回ぐらい出てくる(乗ってる車のナンバーまで「8686」)こと以外、全く見所のないアニメでしたが…。

評者→青木泰子(29):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。

バックナンバー