今週の一本
「あずみ」
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日曜日の昼下がり。外はいい天気だ。窓から入ってくる風が心地いい。私は座椅子の背もたれを倒し、積み上げたマンガをごろごろ転がって読みふける。「あぁ、幸せ」思わず呟いてしまった。私はマンガが大好きだ。…と、改めて宣言するとかなりバカっぽいですね。マンガにもいろいろありますが、やはり青年誌が一番読み応えがあります。さてと、いっぱい読んでおなかも減ってきたし、出前でも取るか(外出しろ)。気分はもうブルジョワ(ダメ人間)。
ビックコミックスペリオールに連載中の『あずみ』が映画化されました。監督は『VERSUS』でハリウッドからも注目されたという北村龍平。とにかくカッコイイアクションを撮ることにこだわる熱い男です。あずみ役に抜擢されたのは上戸彩。あずみと言えばパンチラ(正確にはふんどし)なのですが、フトモモ全開の衣装でありながら、下にスパッツのような着物を装着しており、ガッチリとガードされていることを、ご報告しておきます。そして、あずみを取り巻く仲間たちには、9人のあずみBOYS(決して私が命名したわけではありません)のみなさん。彼らを刺客として育てた爺役には原田芳雄。敵の刺客、美女丸にオダギリジョーが出演。
まず、北村監督お得意のチャンバラアクションについて。原作をそのまま実写化すれば、『スターシップ・トゥルーパーズ』のようなスプラッタアクションのチャンバラ版になるはずですが、残虐なシーンは意図的に押さえられているようです。また、撮る角度を工夫したり、斬る直前で斬った直後の映像にカメラを切り替える(斬る瞬間を写さない)ことによって、チャンバラの不自然さをなくそうとしているようです。そしてそれはある程度成功していると言えるでしょう。また、ラストで200人くらいの敵に向かっていくシーンは、まさに『あずみ』という作品の真骨頂と言え、爽快です。
しかし、アクション以外の人間ドラマ部分は手を抜いていると言わざるをえません。重要な要素である仲間との絆や、人を斬ることに対する苦悩などが全く感じられませんでした。登場人物の喜怒哀楽も取って付けたようなものばかり。どんな大きな悲しみや悩みも、ごく簡単な言葉や叫びで片付けられてしまうのだ。怒ったときは「きぃさぁまぁぁー(貴様)!」。疑問に思ったときは「なんでだー!」。爺が死ぬときには「じいぃぃー!」。なんでしょうか、このヘボヘボなセリフは…。人の感情はそんな単純じゃないぞ。あえて何も言わないことで、もしくは微妙な表情だけで語るべき場面も必要なのでは?
それに反して、悪役達の好演には目を見張るものがあります。あずみ達を狙う佐敷三兄弟、長男役の遠藤憲一もかなり良いのですが、特筆すべきはオダギリジョーでしょう。どこからともなく赤いバラを取り出す(原作ではツバキだったのだが…)狂った剣士、美女丸のオカマ言葉でのハイテンションな壊れっぷりが素晴らしい。この作品における自らの役割を的確に理解し、完璧に演じているのがすごいです。
8年前、北村監督は制作費わずか30万円の自主制作映画によって、そのパワーやスピード感が評価され、注目を集めました。その頃から監督は一貫してアクション、バイオレンス、スプラッタホラー、SFなどのエンターテイメントにこだわり続けている。だが、そこにこだわり過ぎるが故に、未だに「アクションなどの見せ場さえ撮れば他のシーンはどうでもよし」というスタンスで映画を撮っている気がします。北村監督にしてみれば、登場人物の感情や人間関係を描くために費やす時間など勿体無いということなのだろうか。そこをしっかり描くことによって、エンターテイメントとしての質は確実に上がるはずなんだがなぁ。
ラストもなんかチグハグで歯切れの悪い終わり方でして、そんなダメさを考えれば2点止まりなのですが、チャンバラシーンは悪くないし、オダギリジョーのキレた芝居も楽しめたので、3点とさせていただきました。
最後に、あずみファンのみなさんに悲しいお知らせがあります。なんと、この作品にはあずみの入浴シーンがないのです。現在発売されているコミック1〜28巻まででのお色気入浴シーン(行水含む)は14回もあるのに(数えるなよ)。そんな、某しずかちゃん並のお風呂好きなのにぃー!なんとか頑張って入浴してほしかった。で、いつものように、その裸体を男達に目撃されて、「う、美しい」だとか「お、おぬしは菩薩か」などと言われてほしかった。まあ、アイドルにお願いするのは無理な話か…。
評者→青木泰子(30):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。
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