今週の一本
「TAXi3」
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みなさん、コンニショア。リュック・ベッソン製作、脚本の人気シリーズ第3弾です。監督は『TAXi2』や『WASABI』を撮ったジェラール・クラヴジック。出演は毎度お馴染みのメンバー。改造タクシードライバー、ダニエルにサミ・ナセリ。実は彼、ああ見えてもう41歳です。相棒のドジな刑事、エミリアンにフレデリック・ディーファンタル。この二人の恋人にそれぞれマリオン・コティヤールとエマ・シェーベルイ。いつもおちゃめな警察署長にベルナール・ファルシーが出演。
TAXiシリーズは1作目から「CGを使わないカーアクション映画」というのが売り文句だったのですが、今回、カーアクション要素はかなりヘボまっています。というか、ほとんどありません。いつものように強盗団も登場するのですが、タクシーVS強盗団のカーチェイスが描かれることはありません。どっちかというと、ただの尾行という感じなのです。しかし、TAXiシリーズはカーチェイスだけで成り立っている訳ではありません。カーチェイスを取って残るもの、それはコメディです。
そんな訳で、本作には初めから終りまでお笑いが満載です。でも、各キャラの奇行が前作からさらにエスカレートしており、ちょっと悪ノリが過ぎる気がします。まあ、笑えるからいいんですけど。署長は相変わらず楽しいし。ただ、ストーリー性が皆無で、単発ギャグが次々と繰り出されるのです。それはもうミスター・ビーンの如く(古いか)。もう、ギャグ大全集を見せられているかの様でした。
確かに、TAXiシリーズにこのようなギャグ要素を求めている人も多いでしょう。そのへんのハンパなコメディ映画より、よっぽど笑えますし。が、やはりファンが望んでいるのはカーチェイスによるスピード感です。これを無くしちゃいけません。前作『TAXi2』のスタント撮影中に起こったカメラマンの事故死や主演のサミ・ナセリが実生活で起こしたカーチェイス事件(他の車を追い回したあげく、暴行)などからくる、派手なカーチェイスを撮ることへの風当たりの強さに失速してしまったのでしょうか。なんにせよ、シリーズ物なんだから、固定ファンをもっと大切にしてほしい。裏切っちゃダメだ。
シナリオもどこか不自然でして、「なんでこんなヘンテコなシナリオなんだろう」と、会社でお仕事中にず〜っとず〜っと考えてたら、やっと私のダメダメ頭脳がその答えをはじき出しました(仕事しろ)。この作品、まず間違いなく、”ギャグを先に考えている”。そのギャグをペタペタ繋ぎ合わせるのがシナリオの役目というわけだ。いかんな〜ベッソン君、そりゃいかんよ。君の脚本はお笑い芸人のネタ帳のようだよ。君も社会人なら、もうちょっとマジメに仕事したまえ(お前が言うな)。
こんな風にベッソン作品に文句を言いながらも、毎回見てしまう私はひょっとしてベッソンが好きなのか?そんな意識はないんですが…。不思議です。
ここ十数年でフランス映画の印象って、すっかり様変わりした気がします。かつてフランス映画といえば、洗練された美しい映像でひたすらアンニュイに男女の恋愛(ときには同性愛)を重く、暗く綴っていくような映画ばかりでした。「せよ〜ん、そぼ〜ん」などと、けだるくボソボソと愛を語り合っていたのに、今やカーアクションあり、カンフーあり、ギャグありで、娯楽要素満載です。そんな今日のフランス産娯楽映画の乱立は、アクション娯楽作でハリウッドに十二分に対抗できることを証明したリュック・ベッソンの偉大なる功績(功罪?)によるものと言えるでしょう。
さて、本作にはある大物スターが出ております。いわゆるカメオ出演というやつです。誰なのかは見てのお楽しみ。でもせっかくだから、ちょこっとだけその人物の特徴をヒントとして挙げておきます。よかったら暇つぶしに考えてみて下さい。
・「肉屋に吊るされた肉にパンチした経験あり」
・「腕相撲するときは帽子は後ろ前にかぶる」
・「F1マシンをノーヘルで運転できる」
・「お歳暮にはハムを贈る」
さて、その人物とは?
(正解者の方には、別に何も出ません)
評者→青木泰子(30):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。
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