今週の一本
「ターミネーター3」
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シュワ出世作の続編、第3弾です。このところパッとしないシュワとしては、ヒットが狙えるこのシリーズをどうしてもやりたかったようで、前作、前々作と監督をつとめたジェームズ・キャメロンに何度もラブコール。しかし当のキャメロンは「撮りたいものはもうすべて撮った」と無関心。それよりも日本の漫画『銃夢(ガンム)』の実写映画化に夢中です。よって本作の監督は『ブレーキ・ダウン』や『U−571』を撮ったジョナサン・モストウが担当しております。
ムキムキ人間アーノルド・シュワルツェネッガーが扮するのはターミネーターT−850。前作で演じたT−800からちょっとだけバージョンアップしているようですが、特筆するほどの違いはありませんでした。強いて言えば、顔のシワが増えたぐらいでしょうか。新型ターミネーターT−Xには元モデルのクリスタナ・ローケンを抜擢。キティちゃんが大好きとのこと。来日したときにヌイグルミ貰ってメチャクチャ喜んでました。女の子らしいカワイイ一面もあるんですね。でも私だってお人形の一つや二つ持ってます。ゾンビスポーンとか…。主役のジョン・コナーには『イン・ザ・ベッドルーム』で注目された若手俳優ニック・スタール。『T2』でジョン役を演じたエドワード・ファーロングは一旦キャスティングされたものの、ヤク中あがりだったために降板。アル中&ヤク中と、彼も売れっ子ハリウッド子役の王道を突き進んでいますね。そのほかジョンの幼なじみ役として、『ロミオ+ジュリエット』のクレア・デーンズが出演しています。
本作をご覧になった方は色々とご不満な点も多いことかと思います。その一つがキャスティングについてでしょう。つまり、前作に比べてジョン・コナーが不細工すぎると。しかしみなさん冷静に考えてみて下さい。1作目でジョンの父親を演じたのは小汚い不精ヒゲがよく似合う、野性味あふれるマイケル・ビーン。母親は…なんかこう、別の意味で野性味あふれるリンダ・ハミルトン。
この二人の間に生まれた子供はどんな顔になるのか?それこそ、誰あろうニック・スタールの(サル)顔ではないのか!そもそもあの二人から美形のファーロング少年が生まれることがおかしいのです。だからキャストはこれでいいのだ。たぶん…。
やはり最大の不満点は、シナリオのいい加減さでしょう。序盤のネタバレになってしまいますが、ちょっと見過ごせない酷さなので、あえて書いてしまおう。※以下、ネタバレ注意です。
ある夜、主人公ジョン・コナーがバイクで疾走中、たまたま飛び出して来たシカのせいで事故って怪我。痛み止めのクスリ欲しさに、とある動物病院にこっそり忍び込む。しかし深夜にも関わらず、急患の猫のせいで偶然にも出勤してきた女性獣医師に発見されて
しまう。その獣医師は偶然にもジョンの幼なじみだった。また彼女は未来世界ではレジスタンスとしてジョン・コナー直属の部下となるため、偶然にもその夜、ターミネーターによって命を狙われようとしていたのだ。おまけに彼女の父親は偶然にも人類VS機械の戦いの発端となる人工知能スカイネット開発の最高責任者でもあったのだ。何たる偶然。とほほ。
ターミネーターシリーズの魅力って、高い娯楽性を維持しつつもテーマやシナリオがしっかりしていることにあると思うのです。今作の監督ジョナサン・モストウは「ターミネーターは大作なのでいささか尻ごみしてしまうが、逆にファンの望むものがハッキリしているので、その点では撮りやすい」などと大口叩いていました。お決まりのセリフやギャグを入れてのファンサービス。加えて派手なアクションシーン。…モストウよ、それだけでいいのか?少しファンをなめてやしないか?こんなシナリオ、私でも書ける(かもしれない)。こんな脚本だからリンダ・ハミルトンにも出演を断られるんだ。それに、お約束を重んじるんだったらちゃんとオープニングにテーマ曲を入れときなさい!
アクション要素にも触れておきましょう。毎度、でっかい車でのカーアクションがありますが、今回は巨大なクレーン車や消防車などを使っており、BGMを廃したこのチェイスシーンは決して悪くありません。また、重量感にこだわったという格闘シーンもなかなかの迫力で、ワイヤーを使った昨今の軽々しいアクションとは対照的で新鮮でした。特に男子トイレでの死闘は一番の見どころです。便器を武器に戦うぞ。
過去作品をすべて否定してしまうような(自称)衝撃のラストには、賛否両論あるでしょう。でもそんなこととはお構いなしに更なる続編を撮るつもりらしく、監督もシュワもやる気満々のようです。
このように、かつての名作もどんどん安売りされていくわけですね。
エイリアンシリーズの二の舞になってしまうのでしょうか。無念…。
評者→青木泰子(30):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。
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