音楽レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年8月20日号
 
【隔週更新映画レビュー】 著:システム開発会社勤務 青木泰子(30)

今週の一本
躍る大捜査線 THE MOVIE2
レインボーブリッジを封鎖せよ!」

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お盆に里帰りする途中、新幹線の駅の売店にて、車中で読もうと雑誌を一冊買いました。チョイスした雑誌は『女性自身』。初めて買ったよ『女性自身』。その中身は、ほのぼの皇室情報からジャニーズグラビア(乳首あり)、はたまたソウメンの美味しい食べ方から心霊写真特集に至るまで、極めて欲望に忠実です。表紙を見ているだけでクラクラします。で、その中の記事によると織田裕二と柳葉敏郎の仲は最悪なのだそうです。自己中心的な裕二と、団体行動を重んじる柳葉(さすが一世風靡SEPIAのJONY)はまさに水と油。ウソかマコトか撮影現場は一触即発だったとか。ちょっとした裕二のわがままに、額にシワを寄せ、頬っぺをプックリ膨らませて耐えるギバちゃんが目に浮かびます。

フジテレビ開局45周年記念作品ということで、テレビを中心に、あらゆる手段でプロモーションを展開してきた本作。その甲斐あってか、興行収入はすでに110億円を超え、『南極物語』が持つ実写邦画の記録を20年ぶりに更新したそうです。テレビドラマとしても、もともと人気が高い作品ですしね。あまりドラマを見ない私ですが、『踊る大捜査線』は大好きでした。監督はドラマと同じく本広克行。緑のコートがトレードマークの熱血刑事、青島にはもちろん織田裕二。キャリアでありながら組織を変えたいと奮闘する室井管理官に柳葉敏郎。他に深津絵里、いかりや長介、水野美紀、ユースケ・サンタマリアなどお馴染みのメンバーに加え、青島・室井と対立する沖田管理官として元宝塚歌劇の真矢みきが出演。

全体の印象は、良くも悪くもテレビドラマの映画版だなあという感じです。あくまでテレビドラマの延長にある作品だと。そしてそれはこの作品の正しい姿であるとも言えます。ドラマ版が好きだった人なら、かなり楽しめるのではないでしょうか。むろん映画ならではの部分もあります。凝ったオープニングタイトルはカッコイイし、お台場中に設置された監視カメラ網を使った監視システムというアイデアや、発展途上で未完成の街というコンセプトも秀逸です。

でもテレビドラマっぽいヘボさが多いのも事実。例えば、犯人像を推理する過程などはテレビドラマだから許される手抜き加減。だって、「殺されたのは企業の役員なので、犯人はリストラされたサラリーマンだ」「お台場にある会社にリストラされたサラリーマンで、現在行方不明なのは5人いる」「なら、その5人が被疑者だ」って、そんなんでいいの?また、犯人を逃がさないためにお台場を封鎖するという展開もヒドイ。夜に逃げられたんだから、夜が明けてから封鎖しても遅いでしょ。

このようにとても素朴な疑問が沢山あるわけです。アラを探せば幾らでも見つかるでしょう。そんなでたらめさを広ーい心で許しつつ、肩の力を抜いて鑑賞することをお勧めします。「テレビドラマの映画版を見ているんだ」という自覚が大切です。さすれば心置きなくこの作品を楽しむことができるでしょう。実際、劇場は観客の笑いと涙に満ち溢れていました。秋田県出身で東北なまりの抜けない俳優、柳葉敏郎の自虐的とも取れるギャグには、私も爆笑しました。

『踊る大捜査線』を支えているのは、各キャラクターの魅力だと思うんです。一人ひとりが作り込まれていて個性的。特に青島刑事と室井管理官の、お互いを認め合いながらも馴れ合わない関係が気持ちいい。織田裕二と柳葉敏郎の仲はさておき、青島と室井は最高のコンビで、不覚にも格好良く見えてしまいました。

では最後に、柳葉敏郎演ずる室井管理官のモノマネを一緒にやってみましょう。
1.椅子に座って机に肘をつき、手を顔の前で組んで握ります(基本姿勢)。
2.若干、口を尖らせ、目を剥き、眉間にシワを寄せます。
3.可能な限りアゴを引きます。この際、できるだけアゴから首にかけてシワを作るよう心掛けて下さい。
4.おちょぼ口を維持しつつ、いよいよ頬っぺに空気を注入します。膨らませ過ぎないよう注意して下さい。
5.頬っぺの膨らみを維持しつつ、眉を上に押し上げ、額にシワを作ります。
6.頬っぺの空気を一気に放出します。「プッフー」と言う感じで。
…やってみて気付きました。こんなの絶対無理!人間の顔はこんなに動きません。改めて彼の顔面アクトの凄まじさを思い知りました。そのうち田中邦衛を上回るかもしれませんね。

評者→青木泰子(30):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。

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