私、しがない会社員をしておりますが、子供の頃は宇宙飛行士になりたかったのです。漠然とですが、そんな夢を見ていたのですよ。でも今ではうだつのあがらぬ給料人間・サラリーマン。遠い星の世界へ旅立つ予定だったのに、一体何処で道を間違えたのかな?今ではせいぜいプラネタリウムの星を眺めるのが関の山です。
今回、映画レビュー番外編としまして、プラネタリウムで上映している映画をご紹介しましょう。映画と言っても特にストーリーはありません。もちろん登場人物もなく、ただ星が写されるのみ。上映時間も短く、20分ほどです。でも私にとってこの20分間はとても刺激的でした。
ご紹介するのはニューヨークにあるアメリカ自然史博物館附属のヘイデンプラネタリウムがNASAの協力を得て作成した映画、『Passport To The Universe』の日本語吹替版です。ヘイデンプラネタリウムでは2000年からロングランされている人気プログラムで、すでに200万人以上が訪れているそうです。日本では現在、大阪市立科学館で公開中(11月28日まで)。大阪市立科学館のプラネタリウムはドーム全体にデジタル映像を投影することができ、臨場感あふれる迫力の映像を楽しむことが出来るのです。ナレーションはオリジナル版のトム・ハンクスに代わって、当初坂本龍一が担当していたのですが、なぜか(トム・ハンクス役の)声優さんに変更されました。教授の素人っぽい解説の方が良かったのに、残念です。
さてみなさん、「宇宙の地図」をご存知でしょうか。かつて宇宙飛行士を目指したこともある私の説明は少々専門的過ぎて難解かもしれませんが、我慢して聞いて頂きたい。夜の空に光っている星たちは、かなり遠くにある。地球からずーっとずーっと離れたところにある。むっちゃ遠い。んで、その星たち一個一個がどの方向にどれくらい離れたところにあるのかを、でっかくてよーく見えるすごい望遠鏡で調べる。すると地球を中心としたすっごく遠くまでの3次元の地図ができあがる。これが「宇宙の地図」なのだ。たぶん。
この地図をデータ化し、コンピューター・グラフィックで映像化して、バーチャル宇宙旅行に行こうというのが本作のコンセプトで、つまり今人類が手にしている宇宙の地図の端っこまで行ってみようというのです。
では出発です。地球を旅立ち、火星、木星、土星とどんどん遠くへ離れていきます。惑星探査機ボイジャーが2年かけて到達した距離も、CGの世界ならあっという間。さらにスピードを上げ、遥か遠くオリオン座を目指します。見慣れた2次元のオリオン座も近づくにつれて形が崩れ、3次元では離れて位置していることが分かります。オリオン大星雲の美しい姿を堪能し、さらに遠くへ進みます。やがて渦巻状の銀河系が現われ、さらにさらに遠く離れると、無数の銀河が網目状に集まって形成される超銀河団が出現!
う〜む、文章で書いてしまうと何とも味気ないですが、これを映像で、しかも3Dのリアルな動画で見せられると、宇宙がいかに広大であるかが、そして私たちの地球が、太陽系が、銀河系が、宇宙のほんのほんの一部分であるということが手に取るように分かります。「宇宙は広い」ってことは誰でも知っているけど、それを視覚で教えてくれるんだからスゴイ。
果てしなく広がっていく宇宙を見ていると、自分の存在がとてもちっぽけに感じられ、それと同時にイヤなことや、くよくよ悩んでいたことなんかがひどくつまらないことに思えてきます。なんかこう、心が軽くなる感覚がたまらん。地上の現実から何十万光年も離れたバーチャル空間は現実逃避に最適ですな。そして宇宙の広さを実感した私は確信した。こんだけ広けりゃ絶対いるよ、宇宙人!もうウジャウジャいる!宇宙怪獣とかもいるかもしれない。矢追さん、今まで馬鹿にして悪かった。
※番外編なので点なしです。
評者→青木泰子(31):いい映画って少ないですね。年に数本見つかれば多い方。これじゃあまりに寂しい。ならば残ったダメ作品を楽しむしかない。例えダメな作品でもダメなりに楽しく紹介する、そんなレビューになればいいな。
|
バックナンバー
|