映画レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年1月29日号

 【隔週更新音楽レビュー】著:企画制作会社勤務 斎藤 滋(24)

今週の一曲
「UNSPEAKABLE」
Every Little Thing

>>>>>


個性的って言われるとうれしいですか?斎藤です。
今週はちょっと前の曲なんですが、長谷川京子の「今年の私ってそう言えばよく笑ってたな」のCMが気になってたのと、年明けてもよく売れてるみたいなんで、ELTの「UNSPEAKABLE」を聴いてみました。

で、実際CDで聴いてみると、ノッペリしていてあんまり特徴がないんですよ。詞も「好きな人との幸せをかんじながらも、もっともっとぉ」っていう可愛い女心を歌っているんですが、とくに目立ったとこはないし。アレンジも適度・・・。

サビの<♪サヨナラも言えないくらいに/しっかり抱き締めていてね>のところが一番の盛り上がりどころで、キーも上がるんですが、持田嬢はいたってマイペース。高音を出すだけで、声の表情は全く変らない。この前TVで見たら、もっと抑揚がなくて驚きました。

ただ、とても完成度が高い。素人耳には、「もっとヒネってほしいなぁ」と思うとこはあっても、「これ失敗なんちゃう!?」と思わせるとこが皆無。歌はリズムもずれないし、音程も外さない。音についても、ほぼ全部打ち込みに近い形だろうから失敗がないのは当然として、音数とか、入り方とか、重ね方とかに嫌味がない。ま、強いて言えば新しいところが無いので、ダサイor古いと言われる可能性はありますが。

と、上記の様な“特徴のなさ”はELTに対しての、ネガティブ方面の一般的な意見だと思うんですよ。じゃ、なんでこんなに売れているのか?確かに一時販売枚数が落ち込んだりした時期もありましたが、今回のマキシはそれなりに売れてるし、よく考えると、このポジションって、他に誰もいない気がするんですよ。

で、その理由を考えてみることにしました。 ぼくは上に書いたことと同じで、“無個性“こそがELTの魅力だと思います。それは誰が聞いても、どこで聞いても、それなりに違和感が無い、って面が一つ。オリジナルが無個性ゆえに、自分を投影しやすい、感情移入しやすい、というのが2つ目。そのメリットに加え、一定の品質と定期リリースの安心感もあるんじゃないかな、と。 良くも悪くも“既製品“なんですよ。わかりやすくあえて例えると「ユニクロ」。トガった感じは全く無いけど、耐用年数も長く、人に笑われない程度にはオシャレで、誰が着てもソコソコ似合うようことを目指したデザイン、と必要な機能を十二分に活かす完成度の高さ。

だから、ELTのCDはアートとかファッションとかそんな方向ではなくて、一般消費財・生活雑貨に近いのではないかな、と。それは”聴く“、というよりも、BGMとして”流れている“感じ。パジャマに主張はいりません。そうすると、上に書いたような特徴がプラスになってくる気がします。

そんなわけで、ELTの良いところを見た場合、「UNSPEAKABLE」は合格点の3点といえるのではないでしょうか?

それではまた、次回。

評者→斎藤 滋(24):一番好きな歌はスーパーカーの「Sunday People」。言葉で激しく主張するのではなく、メロディ、アレンジ、詞が絡み合い、全体で“何か”を伝えてくれる曲が好きです。スガシカオの人の心の動きとシチュエーションを切り取る詞も好な一方、全盛期の小沢健二の暴力的なまでのキャッチーさにもひかれたりします。

バックナンバー