映画レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年2月26日号

 【隔週更新音楽レビュー】著:企画制作会社勤務 斎藤 滋(24)

今週の一曲
「RECREATION」
スーパーカー

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一番最近殴られたのっていつですか?斎藤です。

今回は半ば個人的な趣味で、スーパーカーの新譜「RECREATION」です。
初期のベストアルバムと同時発売のシングルのタイトルが“再−創造”(英語でも 「recreation」はカタカナの「レクリエーション」と同義らしいんですが、『このタイトルは「Re-Creation」のつもりで付けた』と作詞の人が各地で言ってました)。

シューゲイザー風へなちょこギターポップから、ハードディスク・レコーディングをフル活用したシカゴ音響系風へ、とデビュー時からかなりスタイルを変えてきているバンドなので、次は何?とドキドキしながら聞いてみました。

結論から言うと、“いつもどおり”でした。
ずっと繰り返されるペナペナしたギターのフレーズ、リズムのメインは乾いた感じがする生ドラム、それに打ち込みの音がいくつも重なったところに、ユル〜いボーカルがのって、たまらない浮遊感を生み出してます。衝動とかはあんまり無いんですけど、ズルズル引き込まれていく感じで、エンドレスリピートです。

さっき、スタイルが変ったって書いたんですけど、スタイルが変わっても変わらない、スーパーカー最大の特徴が“あたまでっかち”です。
それはまず、曲の構成の美しさ。全体の統一感、バランスとか、メリハリとかは当然として、一つひとつの要素全てに必然がある感じがするんですよ、すごくロ ジカルな。左脳で右脳に訴える音楽を作っていると言ったらいいのかな。曲の完成形を頭の中に持っていて、その通りになるように、意図をもって落とし込んでる気がするんです。スーパーカーの作曲者、中村氏は、全体を俯瞰して取捨選択できるプロデュー サー的なセンスをとても持っている人みたいです。

そして、詞。スーパーカーというバンドは、詞的には1stでほぼ極めていて、その後はちょっとナゲヤリな感じなんですが、2ndアルバムあたりまではかなり小生意気な歌詞だったんですよ。<長いもんには巻かれたい>とか。でも、小生意気なだけで、言葉にいまひとつ重みがない。本当の大人には鼻で笑 われてしまうような、頭だけで考えたヘ理屈。ま、そこに妙なイノセンスとシン パシーを感じたりして、ぼくがスーパーカー好きな理由でもあるんですがね。

流れとは関係ないですが、歌詞を書いているのが、ギターの人で、ボーカル(・ ギター)は作曲のみなんですよ。そういう制作体制も詞の他人事感を強めていると思います。
ただ、できればもう一つ上のランクに行くために、外資系CD店のチャートだけ でなく、全日本的なレベルでの共感を得るためには、“リアル“が必要ではないか と思います。血の鉄臭さとか、涙が意外にサッパリしていることとこか、精液のドロっとしたところとか、そういう体温とか臭いを、自身が持つ設計図に盛り込めたら、スーパーカーにはエロさが加わります。そしたら、さらにいいもの、と いうか、人を引き付けるものになるんじゃないでしょうか。

とは言え、「RECREATION」は“現スーパーカー”としては非常に完成度が高く、気持ちいい仕上がりだったので4点としたかったのですが、カップリング曲のギターがカッコよすぎて、そっちの曲のほうがよく聴こえてしまったので、3点とさせていただきました。

なんか今回は、小難し気に書いてしまいましたが、また次回に。

評者→斎藤 滋(24):一番好きな歌はスーパーカーの「Sunday People」。言葉で激しく主張するのではなく、メロディ、アレンジ、詞が絡み合い、全体で“何か”を伝えてくれる曲が好きです。スガシカオの人の心の動きとシチュエーションを切り取る詞も好な一方、全盛期の小沢健二の暴力的なまでのキャッチーさにもひかれたりします。

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