映画レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年3月26日号

 【隔週更新音楽レビュー】著:企画制作会社勤務 斎藤 滋(24)

今週の一曲
「世界に一つだけの花」
SMAP

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「あと1年で死ぬ」と言われたらどうしますか?斎藤です。
今回はSMAPの「世界に一つだけの花」なわけですが、いや〜、いいですよ、これ。また教科書に載れちゃいます。

初めてある程度まとまった長さで聞いた時に、「あ!これ、カラオケで歌いたい」と思ってしまいました。リズムが遅くもなく速くもなく、取り立てて難しいとこもないし。サビの直前の<♪一人一人違うのにその中で/一番になりたがる?>ってところの最後を「るぅ」で溜めて、サビ頭の<♪そうさ 僕らは>にスッと入るところの流れがとっても気持ちよさそうでした。

そして、メロディとか詞が各地で評価されていますが(とくに詞)、忘れてならないのが譜割りの気持ち良さです。上に書いたことの理由と重なるんですが、言葉を詰め込みずぎてリズム感や活舌を求められたりしてないし、その逆で少ない言葉数をしっかりと歌い上げることも求められない。
この曲の一つの聞きどころに、中居くんソロ・パート(しかもソロ・トップバッター)があると思うんですが、「あ!ここ中居くんだ!!」と思う以外はとくに気ならず、どうにか乗り越えられてるのもその歌いやすさゆえです。

♪NO.1にならなくてもいい/もともと特別なOnly one

このイントロでも歌われる1フレーズに対して、聴く側が必要以上に意味を求めてる気がしますた。時期が時期だけに、勝手に反戦とからめられたりしてて、もったいないです。
別に目新しいことではないと思うんですよね、こんな内容。それでも、この曲が傑作であるのは、SMAPが歌っているから。そのことに尽きると思います。

この歌、彼らそのもののことではないだろか、と思うんですよ。
いまさらぼくが説明することではないですが、SMAPって元々はジャニーズ始まって以来のダメ・ユニットだったって話ですよね。それでも、才能か後付かはわからないけど、すごく個性が彼らにはあった。
そして、キムタクの「俺様オーラ出しまくり」も、中居くんの「バカ・元ヤン」も、草なぎくんの「いい人」も、吾郎ちゃんの「ニヒル」も、慎吾ちゃんの「子ども」も、いままでアイドルにいないわけじゃなかったけど、彼らはそのキャラの刷り込みに成功したわけで。

♪頑張って咲いた花はどれも/きれいだから〜

実は一番大事なところを、サラっとマッキーは織り込んでます。一人の人間がONLY ONEであることなんて間違いなくて、あとはどれだけ頑張れるかではあるんですよね、ホントは。
SMAPって、言ってみればNO.1でもあるじゃないですか。磨かれたONLY ONEはNO.1にもなりうるのも、当然と言えば、当然ですが。

SMAPに限らず、アイドル系だったりTV露出の高い歌手の曲は、楽曲そのものクォリティ以外の部分での評価されてて、それはあまりよろしくないこととされてるじゃないですか。キャラでカバーするのは音楽家としていかがなものか、と。

でも、この曲に関して言えば、SMAPってどんな人たちなのかを知っているから、みんな心が動いたと思うんですよ。何をどんな風に言ったかも重要ですが、誰がそう言ったのか、ってことも重要ですよね。確かに、曲も詞もていねいに作ってある良曲ですが、この曲、SMAPが歌わなければ、こんなに話題にもならなかったでしょう。いつもTVで見ているSMAPがイイコトを歌うから、みんな歌詞をしっかりと受け止めすぎたのかな、なんて。

そんなわけで、ぼくの持っているSMAP像と楽曲が結びついた「世界に一つだけの花」は5点とさせていただきます。最近、いい曲が沢山発売されていてうれしい限りです。

実を言えば、ただ一つ。おしいなぁ、と思ったことがあります。それはそんな素敵なONLY ONEたちの入れ物、「バケツ」の役割について触れてくれてたら最高だったなぁ、と。そのあたりが、ソロミュージシャン槙原敬之の限界というか、届かないところだたのかなぁ、と。蛇足になる可能性大ですけどね。それをどう料理するのが見たかったです。それでも完成度を考えれば、5点のままで。

では、また次回。

評者→斎藤 滋(24):一番好きな歌はスーパーカーの「Sunday People」。言葉で激しく主張するのではなく、メロディ、アレンジ、詞が絡み合い、全体で“何か”を伝えてくれる曲が好きです。スガシカオの人の心の動きとシチュエーションを切り取る詞も好な一方、全盛期の小沢健二の暴力的なまでのキャッチーさにもひかれたりします。

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