映画レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年4月23日号

 【隔週更新音楽レビュー】著:企画制作会社勤務 斎藤 滋(25)

今週の一曲
「エレクトリック先生」
HALCALI

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右と左、どっちが好きですか?斎藤です。
今週はHALCALIの「エレクトリック先生」です。

このHALCALI、デビューシングルから素晴らしく、取り上げたかったのですが、タイミングを逃してしまったため、今回、2ndシングルを。
すでにCMやTVなどで何度か耳にしていて(サッポロの「まる福茶」との関連性は不明)、相変わらず音・詞ともに特異で、妙に心に残るので、期待してました。

しっかり聴いててみると、この曲のキモはチープな電子音のバックトラックやまったく脈略ない言葉が並ぶリリックのヘンテコ具合ではない気がしてきました。
この曲の魅力は、リズムが前へ行ったり後ろに下がったりしながらできるウネリの、変な気持ち良さではないでしょうか。しかも、その変化する曲調に合わせて、彼女達もしっかりと、ダラ〜っと歌ったり舌滑よくラップしたり。14、15くらいらしいのですが、それなりに技術とか才能があることを感じます。

このユニットのプロデュースは、ご存知のようにOTF(オシャレトラックファクトリー)という名義でRIP SLYMEのメンバーが担当しています。

ダラダラ、変な曲、大物(?)ミュージシャンのプロデュース…etc. パフィーが頭に浮かびますが、全然まだまだですよね。何より、まだ個性が出てませんからね。極論すれば、この曲を歌うのが「HALCALI」でなくても、そこそこコナしてくれる、カワイげな女の子でいいんです。また、RIP SLYMEが自ら歌ってしまったっていいわけだし。

自分で作詞や作曲をするミュージシャンならば、歌を歌うだけで、当人の主張・個性が意識・無意識含めて出てくるものです。しかし、彼女たちのような「パフォーマー」であれば、表現する内容ではなく、表現のし方でその個性や魅力を出していかなければいけないと思います。

パフィーはあの独特のユルイ“キャラ”がTVをつうじても、曲をとうしても伝わってきます。それと、民夫&陽水のワルノリに本気で応えてみせた根性はやはり唯一無二でしょうね。だから、出てきた時のイロモノ感はすごかった。「なんか変なの出てきたぞ!」と思いませんでした?ぼく、思いました。
また、キャラ立ち「パフォーマー」としての一つの頂点は、モーニング娘。ですが、彼女達にとっての個性の強調は、もうCDのプロモーションやクォリティアップのためのものじゃなくなってしまっていますけどね。 ぼくがHALCALIに、解散してしまったスピードのように、とにかく表現のスキルを高めて欲しいと思っています。
下手に作詞などに手を出してクリエイティブ気分になったり、TVに過剰露出して“キャラ“を売るよりも(両方とも別の能力が必要とされるし)兄貴分のRIP SLYMEを越えるようなスキルを身につけ、「この曲はHALCALIじゃないと」と言ってもらえるようになれれば素敵ではないかと考えています。

そんな期待の意味を込めて、「エレクトリック先生」は3点とさせていただきました。
まずは、どっちがハルカちゃんでどっちがユカリちゃんなのかハッキリさせることからでしょうね。(笑)

それでは、また次回。

評者→斎藤 滋(25):一番好きな歌はスーパーカーの「Sunday People」。言葉で激しく主張するのではなく、メロディ、アレンジ、詞が絡み合い、全体で“何か”を伝えてくれる曲が好きです。スガシカオの人の心の動きとシチュエーションを切り取る詞も好な一方、全盛期の小沢健二の暴力的なまでのキャッチーさにもひかれたりします。

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