映画レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年7月23日号

 【隔週更新音楽レビュー】著:企画制作会社勤務 斎藤 滋(25)

今週の一曲
「Love is forever」
Tommy february6
「Wait til I can dream」
Tommy heavenly6

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 キスする時はメガネ、外しますか?そのままですか? 斎藤です。
今回はTommy february6の「Love is forever」と彼女の別名義であるTommy heavenly6の同時発売シングル「Wait till I can dream」をとりあげてみます。

まず、februaryのほうですが、一昨年のデビュー曲「EVERYDAY AT THE BUS STOP」に一番近い、カラッとしたキラキラ80’sです。キーボードの使い方がやはりうまいです。
そして、heavenlyのほうですが、こちらはちょっと失敗ではないかな、と。というのも、こちらもやはりちょっと昔のロック風のものを、といった意図は見えるのですが、ウリがなくなってしまっています。

februaryが『レトロ+ブリッ子風+無気力+オシャレな演出』という形で成り立っているのに対して、そこのカウンターにキャラを置こうとしたため、heavenlyは『クールでロックでワイルド』。しかし、それでは全くキャラが立ってません。
せっかく初回限定でDVDが付いているんですが、まったく面白くないのです。

まず、februaryが売れた理由として、当時どこかクールで冷たいイメージがあったthe brilliant greenのボーカルが、ボンボン持ったチアガールとお尻フリながら踊っている(しかも、淡々とヤル気は見せずに)。その様は衝撃的でした。

曲のみにとまどまらず、PV、TVで見せるキャラクター、CM(曲のも、タイアップも)なども含めて、『Tommy february6』という“企画“の完成度は恐ろしく高いです。最終的なプロデュースワークを誰がしているのか、わからないですが、その肝はバランス感覚だとぼくは思います。
言葉にしてしまうと簡単ですが、80’s年代風ピコピコサウンド、ちょっとオリーブ系(しかもこれもちょっとレトロ)な衣装、やはり80年代末から90年代初頭をイメージさせる振り付け…等、一歩間違えればただの“ダサイ”に終わってしまうものを、“オシャレ”にまとめあげてる。
「メガネ」はその象徴です。川瀬智子にメガネをかけさせたことが、february最大のヒット。確かにカワイイけれども、ちょっと丸顔なこと以外、これといって特徴の無かった(だから余計クールに見えた)彼女があのメガネで初めてキャラがついた。そして、あのセルフレームは、ダサイのかカッコイイのか、こちらの判断を停止させてしまいます。
そういう“トレードマーク”を作れなかったことと、プロモーションの面から見ても不満があります。“シカケ“が、両方の初回版を買った人へのプレゼントくらいしかないのは残念です。せっかく別人格、表と裏、とするならば、例えばお互いの曲のカバー(アレンジを工夫して)をカップリングに入れておく、とか。

逆説的にfebruaryの成功の理由がハッキリしたものの、せっかくの同時発売なのに“シカケ“が足り無かった今回の2曲は2点とさせていただきます。
しかし、オリコンのサイトで確認したところ、heavenlyのほうがわずかながら売れている様子。うぅ〜ん。

…それでは、また次回!

評者→斎藤 滋(25):一番好きな歌はスーパーカーの「Sunday People」。言葉で激しく主張するのではなく、メロディ、アレンジ、詞が絡み合い、全体で“何か”を伝えてくれる曲が好きです。スガシカオの人の心の動きとシチュエーションを切り取る詞も好な一方、全盛期の小沢健二の暴力的なまでのキャッチーさにもひかれたりします。

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