映画レビ ブックレビ ひとこま画像 2003年8月27日号

 【隔週更新音楽レビュー】著:企画制作会社勤務 斎藤 滋(25)

今週の一曲
「O.P.KINGのテーマ」
O.P.KING

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「アミノ式」と「DAKARA」どっちが好きですか?てか、棲み分けはできてるんでしょうか!?斎藤です。

今回は、サントリーの「DAKARA」のCMで流れてる、O.P.KINGの「O.P.KINGのテーマ」です。 O.P.KING、これが超豪華バンド。御存じの方は御存じだと思うのですが、「O」は奥田民生(Vo/G)、「P」は大木温之(Vo/B)のバンドTheピーズと、佐藤シンイチロウ(Dr)のthe pillows、で「KING」は元ジュディマリのYUKIの旦那YO-KING(Vo/G)。 YO-KINGの声かけで奥田氏と大木氏でなんかやろう、ということになり、ドラムの佐藤氏が助っ人として参加し、結成だそうです。

もはや日本音楽会の大御所となった奥田民生に加え、一部ではかなりの人気を持っているYO-KINGと大木温之、と個性的なフロントマンが3人も集まりました。個性と個性がぶつかり合った傑作ができるか、殺しあって手もつけられないような駄作になるか。難しいところです。

しかし意外なことに、結論から言うと、可もなく不可もなく、といったところでしょうか。この3人で曲を作る、60’sロックンロール回帰、と聞けばだいたい想像がつく範囲のものでした。驚きも落胆もないものでした。

ただ、別の言い方をすれば、“期待通り“。ヤル気あるのか、無いのだか分からない、肩の力が抜けた良い出来です。

この曲は、各自で作ってきて部分をくっつけて、作った部分を本人が歌う、という構成なんですが、こういう企画モノらしくコーラスが盛んに入っていて、とても一体感が出ています。

とくに印象的なわけではないのですが、サビの<♪めぐりあいだから さぐりあいだから/騙しあいだから>は、気がつくと、頭の中で回っています。

お昼ごはんを食べに降りる会社の階段で、ベランダで煙草をふかしながら、家でTVのチャンネルを変えながら。ちょっと楽しい気分の時、ボ〜っとした時に口ずさみたくなります。 ……ここまで書いてきてわかったことですが、このバンド、有名なミュージシャンが集まって、新バンドを作った、というよりも、仲のいい友達と、共通の趣味であるロックのバンドを組んだ。といった趣(おもむき)です。 曲を聴いていて一番具体的に感じたのは、やはり楽しそうなコーラスなんですが、PVを見るとさらに感じます。4人とも終始笑顔で、ふざけあってほんとうに楽しそう。それが音にも出ています。

新しい発見もありました。奥田民生とYO-KING・大木温之との間に決定的な“差“を感じたのです。この「〜のテーマ」と一緒に、各自の書き下ろしオリジナルが1曲づつあるんですが、それをふまえると、もっと際立ちます。 3名とも、ガツガツ・ギラギラとしていて「BIGになってやる!!」といった感じではなく、趣味で音楽をやっていって、聴いてくれる人が聴いてくれればいいや、というスタンスなのは大きくは変わりません。

何が違うのかというと、肩の力の抜け具合。YO-KINGの場合、感情を前面に出している上に“オレ様“が出すぎて、合わない人は合わないでしょう。大木氏の魅力は、どこか捨鉢なところ。上手く言えないのですが、「明日死んでも別にいいや」という感じ。そういう意味では、一番“ロック”なのかもしれません。

それに対して奥田民生は、自然体。立ち位置も前過ぎず、後ろ過ぎず。一番どうでもよさそうに歌っているのに、一番気になってしまう。引き寄せられてしまいます。

奥田民生に、アンチが少ないのもそのへんの理由かな。

ただ、ここで言いたいのは、“メジャー感“というか、より多くの人に”ウケる“要素を奥田民生のほうが持っている、ということで、YO-KING・大木温之両氏が音楽的に下、ということでは、決してありません。ぼく個人としては、前者より後2者のほうが好きですしね。

話が横に逸れてしまいましたが、この「O.P.KINGのテーマ」、癒してくれるわけではありませんが、和んでいる時に、自然とでてきます。その柔らかさ、温かみたいなものを評価させていただいて、4点とさせていただきます。

それでは、また次回。

評者→斎藤 滋(25):一番好きな歌はスーパーカーの「Sunday People」。言葉で激しく主張するのではなく、メロディ、アレンジ、詞が絡み合い、全体で“何か”を伝えてくれる曲が好きです。スガシカオの人の心の動きとシチュエーションを切り取る詞も好な一方、全盛期の小沢健二の暴力的なまでのキャッチーさにもひかれたりします。

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