「コロンビア」の空中分解事故以来、二年五カ月ぶりの飛行再開となる予定だったスペースシャトル「ディスカバリー」の突然の打ち上げ延期。シャトルが待機するケネディ宇宙センターには失望感が広がった。米航空宇宙局（ＮＡＳＡ）は「問題は解決している」と、イメージダウンの回避に懸命だ。

　■苦笑い
　ＮＡＳＡの提供する中継用テレビ映像に、シャトルから出てきて、装具を外しながら苦笑いをする日本人宇宙飛行士、野口聡一さんの表情が映った。
　野口さんが、同じテレビカメラに向かい、「ありがとう」「行ってきます」と日本語で書いた紙片を掲げて、シャトルに乗り込んだのは十三日正午（日本時間十四日午前一時）すぎ。パイロットのジェームズ・ケリーさんの後ろに空を向く姿勢で座り、宇宙への旅は準備万端整ったかに見えた。
　しかし午後一時三十二分（同午前二時三十二分）、ＮＡＳＡは突然、打ち上げの延期を発表。野口さんら乗組員七人は、シャトルから降りて、宇宙センターに隣接している宇宙飛行士専用の宿泊施設に移動した。飛行士一人に医者一人が付いており、万全の体制で再び打ち上げに臨むという。

　■成功への過程
　延期について記者会見したマイケル・グリフィン長官は、第一声で「問題は解決している。これは成功への過程である。決して後退ではない」と強調した。
　「今回の措置は（一九八六年一月の）チャレンジャー、（二〇〇三年二月の）コロンビアの事故を踏まえたもので、有人飛行再開という意味で安全確保を最優先したものである」とも話した。
　ただ、延期の原因が、四月に問題となって交換したセンサーだったことから、米メディアを中心に、テストを行わなかったことなどについて、質問が集中した。
　シャトルの乗務員室のプラスチック製窓カバーが落下し、耐熱タイル二枚を傷付けた前日のトラブルに触れて「既に二回もトラブルがあったのは、今回の打ち上げが安全ではないというシグナルでは」といった意地悪な質問も。
　ＮＡＳＡ側は打ち上げの延期は珍しくないとの見方を示し、「四月にセンサーもそっくり取り換えた。誤作動再発という言い方はおかしい」などと反論した。

　■打ち上げは？
　今後の打ち上げ計画は流動的だ。今週末にはハリケーンの接近に伴う悪天候が予想されている。シャトルを発射台から組み立て棟に戻す必要が出てくれば、一から仕切り直しとなる。
　打ち上げが一日延びると、ＮＡＳＡは燃料代や人件費として計約六十一万六千ドル（約六千八百万円）を余分に負担しなければならない。
　

[産経新聞（7月14日）より引用]

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