大阪市北区の扇町公園にテントを設置し、野宿生活をする無職山内勇志さん(55)が、同公園を住所とする転居届が受理されなかったのは不当として、同市北区長を相手に、不受理処分の取り消しを求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。
西川知一郎裁判長は「テントは客観的に生活の本拠としての実体を備えており、住民基本台帳法上の住所」とし、不受理処分を取り消した。公園での住民登録を認める判決は極めて異例。
判決によると、山内さんは2004年3月、同公園を新住所とする転居届を出したが、北区長は翌月、「公共の公園に私的な工作物を設置しており、住所とは認められない」として不受理とした。
西川裁判長は判決で、「公園の占有許可を得ていないが、住民登録とは本来無関係で、生活の本拠がある限り、転居届の不受理は許されない」と述べた。
山内さんは「住民登録できないため、参政権を行使できず、国民健康保険や旅券の交付も受けられない」と主張し、05年3月に提訴していた。
大阪市は判決後、「(転入届に関しては)訴訟対応を含め、今後、検討する」とした。大阪城、靱両公園のホームレス9人が判決後、中央区役所などに住民異動届を提出したが、市側は受理せず預かったという。
扇町公園には約50のテントがあり、近くの飲食店経営者(76)は「テントを見て出店をやめたケースもある。出ていってもらいたいのに、この判決で逆に増えないか心配」と漏らした。
[読売新聞(1月27日)より引用]
|