小泉純一郎首相(64)は10日、女性、女系天皇を容認する皇室典範改正案の今国会提出見送りを決めた。秋篠宮妃紀子さま(39)のご懐妊を受けて、与党内で急速に慎重論が広がり、動くに動けなくなった。明言している9月の退任前、最後の大仕事と意欲をみせていた事案がなくなり、今後求心力にも影響が出そうだ。追いつめられた小泉首相は「梅咲けど 鶯(ウグイス)啼(な)けど ひとり哉(かな)」と、小林一茶の句をポツリ、孤独な気持ちを吐露した。
小泉首相が昨年の郵政民営化に続いて成立に強い意欲をみせていた皇室典範改正案は、成立はおろか国会への提出さえ見込めない状況になった。通常国会冒頭の施政方針演説で皇室典範改正案を提出する方針を示し「既に目つきが郵政モード」(関係者)といわれたほど戦闘準備に入っていた首相のまなざしは、ここ数日ですっかり穏やかになった。
この日夜、記者団の質問に答えた小泉首相は「私は(提出時期には)こだわっていない」「理解を得るのに時間がかかるんじゃないか」「現実と、頭の中で考えていた状況がだんだん変化していくことはある」と今国会中の法案提出を断念する考えを示した。
懐妊が発表された7日は、まだ今国会中の改正案提出に意欲満々だった首相だが、与党内では改正推進派の中からも慎重な意見が相次いだ。一気に慎重、反対の意見が広がったことで、提出の機会を探っていた小泉首相の外堀は埋まり、答弁も「提出期日にはこだわらない」「全会一致が望ましい」と次第にトーンダウン。9日、慎重派とされる安倍晋三官房長官(51)らとの会談で、今国会提出は困難との認識で一致。発表から3日で『白旗』を揚げざるを得なくなった。
今年9月退任を明言している小泉首相周辺は、皇室典範改正問題を首相在任中「最後の大仕事」ととらえていた。郵政民営化のように、首相が中心になった政権の目玉となる動きがしぼんでしまい、残り7カ月、求心力を保てずにレームダック(死に体)化するのではと不安視する声が早くも出ている。野党の「4点セット」追及で強い向かい風にさらされる小泉政権にとって、マイナス材料になるのは避けられない。
ただ民主党内には、皇室典範問題をきっかけにした自民党内の混乱を期待する向きもあっただけに、幹部からは「首相は先送りの口実を得られて運がいい」との声も上がっている。
[日刊スポーツ(2月11日)より引用]
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