日本の小さな探査機はやぶさが26日、3億キロかなたで大仕事をやってのけた。
小惑星に再着陸し、岩石の採取に挑むという、世界に例のない離れ業。打ち上げから2年半余り、はやぶさを見守ってきた宇宙航空研究開発機構の研究者たちの間には、成功を確信した瞬間、笑顔と歓声があふれた。
26日午前7時過ぎ、はやぶさが着陸態勢に入り、地上との通信が制約される時間帯に入った。息詰まる管制室。その緊張が解けたのは、8時40分ごろ。通信が全面回復し、管制室の画面に「WCT」という表示が現れた。岩石採取装置の作動を示す。「やった」「すごいね」。研究者たちの喜びは、インターネットを通じた管制室の中継で、世界中に伝わった。
米航空宇宙局とは比較にならないほど小さく、人員も少ない同機構宇宙科学研究本部(神奈川県相模原市)にとって、この1週間はまさに総力戦だった。
20日の初挑戦では、着陸寸前に異常が発生。岩石を採取できないまま、灼熱(しゃくねつ)の地表に30分以上とどまった揚げ句、緊急退避によって100キロも遠ざかるという予想外の結果に終わった。
再着陸のチャンスは25〜26日しかない。「高熱で機器が壊れていないか」「燃料が足りるか」――。管制室に詰めた研究者たちは、探査機の“体調”を気遣いながら、寝る間を惜しんで再挑戦の準備にあたった。
総力戦の成果が地球へ戻ってくるまで約1年半、管制チームの戦いは続く。
[読売新聞(11月26日)より引用]
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