「メリー・クリスマス」か、宗教色の薄い「ハッピー・ホリデー」か――米国各地でクリスマスを前にそんな論争が激化している。激論はクリスマス商戦の広告表示から、ツリーやカードの呼び方にまで及ぶ。背景には、ブッシュ大統領再選の原動力にもなったキリスト教右派が開始した「非クリスマス化」反対キャンペーンがある。だが、他宗教の信奉者には反発も強く、ちょっとした“クリスマス文化戦争”の様相だ。
米国では80年代に人権擁護団体が公共の場からキリスト教関連展示の撤去を推進したことがあり、大手小売りチェーン「ターゲット」の約1400店では12月の特売期に入っても「メリー・クリスマス」の表示が目立たない。こうした傾向は近年、米国へキリスト教文化圏以外から移民が大量に移り住み、多民族化が進むにつれ強まっている。
一方で、反発も生まれている。キリスト教右派団体「アメリカ家族協会」は今回、ターゲットを対象に「店内でメリー・クリスマスの表示を禁じている」として抗議、60万人の署名を集めるなどの不買運動に乗り出した。同協会代表は「36ページに及ぶ広告の中にクリスマスの文字が全く見当たらない」などと批判している。
これはキリスト教右派の有力指導者、ジェリー・ファルウェル氏が主導する「敵か味方か、クリスマス・キャンペーン」の一環。同氏はボランティアの弁護士1500人の支援を武器に、法廷闘争や不買運動も辞さない構えだ。
この論争に関連し、ハスタート下院議長がワシントンの連邦議会議事堂前に立つ「キャピタル・ホリデー・ツリー」を「キャピタル・クリスマス・ツリー」と改名するよう命じるなど、全米で同様の動きが広がっている。
だが、保守系FOXテレビの調査では42%が宗教色を強める方向での改名の風潮を不愉快に感じているとされ、世論は分裂状態だ。このため、ホワイトハウスが出すクリスマスカードには今年も「ホリデー・シーズン」と宗教色を薄めたあいさつが印刷された。
だが、保守系FOXテレビの調査では42%が宗教色を強める方向での改名の風潮を不愉快に感じているとされ、世論は分裂状態だ。このため、ホワイトハウスが出すクリスマスカードには今年も「ホリデー・シーズン」と宗教色を薄めたあいさつが印刷された。
◇イスラム国では
一方、イスラム教徒が多数を占める国でもクリスマスが「風物詩」として定着している所もある。
カイロの街角では、断食月ラマダンが終了した11月初旬以降、サンタクロースの人形やツリーが目立ち始めた。仏資本の大型スーパーではクリスマス商戦が真っ盛りだ。
ただ、これらはすべて外国人向け。人口の9割がイスラム教徒だけにプレゼントを交換する習慣はなく、地元に密着した商店街などは「クリスマスムード」とは無縁だ。
インドネシアは人口約2億1000万人の9割がイスラム教徒だが、キリスト教徒も多い。ジャカルタの大型モールには6階まで達するツリー(約20メートル)がお目見えし、買い物客を楽しませている。
[毎日新聞(12月22日)より引用]
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